あっという間に明日で新世界樹の迷宮が発売だとか!
うわーお!
ドラゴン狩りに夢中で情報を追いきれなかったので発売日が近づく実感すらありませんでしたてへぺろ。
というわけで今回は一旦見送りです。プレイするならクラシックモードで1ギルドを使いまわします。
さてさて本日は、世界樹ではなくななぞじ文を持ってきました。
この妄想形にしたいなーとだらだら書き始めたらどんどんボリューミーになっていった、そんな内容です。
とりあえず登場人物。
杉下双葉(フタバ)/外観:デストロイヤー女(橙)/職業:デストロイヤー/CV:佐藤利奈
今回の話の主人公。親友がとても大事。小さな頃から武道を習っていた。
加賀宮末来(ミライ)/外観:サムライ女(緑)/職業:サイキック/CV:日笠陽子
フタバの親友で、武術道場の娘。双子の兄がいた。友達想いの普通の女子高生。
難波六城(ムツキ)/外観:ハッカー男(緑)/職業:サムライ/CV:杉田智和
フタバとミライのクラスメイトで、ミライの憧れの人。なんかワケありの匂いがする。
公式サイトの紹介ムービーや三輪士郎先生の色紙テロがきっかけで登録を決めたという共通点の三人。
何だかんだで気に入ってしまい、妄想が暴走した次第です。
ネタバレはプロローグ終盤までがほんのりあるだけ。
咲きは散る花、種を撒く
力がほしいと初めて願ったのは幼い頃。自身より弱い女を泣かせて笑う、そんな汚らしい男子の高い鼻をへし折るためだった。
半べそで武術道場の門を叩き、己を磨くようになって十年が経った。もう十年か。ぼんやりと記憶をなぞりながら、頬杖をついて一通の封書を持て余す。中身は自宅で確認した。簡単に信じられる内容ではなかった。
「どうしたのフタバ、難しい顔をして」
視界の隅で緑の髪がふわりと揺れる。顔を見ずともその髪と声で人物を特定したフタバは、やや声色を高くして彼女を呼ぶ。
「ミライ、おはよー。アサヒは?」
「寝坊。あれは当分起きないと思うよ」
「あ、そ。今日は何時まで起きていたんだか」
「私は夜遅くまで何をやっていたかが興味あるな」
目線を動かすと、親友の穏やかな微笑みがあった。ミライとも、ミライの双子の兄であるアサヒともおよそ十年の付き合いだ。師範の子供である二人とは同い年なのが縁となり、長い間友人関係を築いている。これからも変わらないと思っていたのだが。
封書が重い。
「フタバ、それは?」
確認せずともそれが何を指すかは理解できた。フタバは掲げて「ミライの家には届かなかった?」と質問を返す。ううんと唸る声。わずかな時間、耳に入ったのは教室の喧騒だけ。
「私だけか。アサヒならもしかして、って思ったけど」
「大会の申込書?」
「いや、大会じゃなくてさ。――ムラクモの戦闘員選抜試験の候補者に選ばれたの」
「え?」
「私がさ、ムラクモの戦闘員になれるかもなんだって」
言葉を紡ぐ口は鈍い。噂でしか聞いたことない謎の機関の戦闘員にだなんて、実感がわくはずもない。ミライやアサヒと話すため、楽しい武道を続けるため。それで積み重ねてきた鍛錬を評価されたのは嬉しいが、しかしフタバは現状に満足している。ヒーローになりたくて強くなったわけじゃない。
それでも、評価の上で資格と可能性を与えられたのは喜ばしいし、誇らしい。相反する感情に挟まれて封書はどんどん質量を増していく。
どうすればいいと思う? 親友に縋ろうとしてその目を見遣ると、まあなんとらんらんと輝いていることか。それ自体が恒星かと疑いたくなるようなふたつの目は、まっすぐフタバを捉えている。
「すごいじゃない、フタバ! うまく言えないけど、それ、すごくすごいよ! うちの道場から選ばれたの、フタバが初めてだよ!」
「え、そうなの?」
「あ、どうだろ、やっぱわかんない。父さんに聞いてみないと。でもフタバなら納得。道場で一番強いし、朝寝坊もしないしね」
弾むようにはしゃぐ様が愛らしくて失笑を零した。親友の良好な反応に曇天が晴れていく。彼女は自分が選ばれたことを肯定してくれる。それだけで胸が空く思いだ。
「……ということは、そういう選抜試験が近くにあるってこと?」
「ああ、うん。そうみたい。来月だったかな? まだ先だから、アサヒにもこれから来るかもね」
武術を習っていないミライはともかく、アサヒは優れた技術を備えていた。模倣技術に長けた彼は、どんな難しい技でも一目見ればそっくり真似をして、すぐ自らの技として会得してみせる能力を持つ。優れた眼力による回避とカウンターに長けたフタバとは相性が悪く、その結果道場の一番を譲っているだけで、実力そのものはフタバと同等だ。朝寝坊さえどうにかなれば彼も候補者に選ばれるはず。そう思ってアサヒの名前を出してはみたが、ミライが口にした名前は別人だった。
「アサヒもそうだけど、難波くんとか」
「……難波?」
ふと問い返したのは、知らない名前ではなく、意外な名前でもなく、そこに出て当然の名前だったからだ。選抜試験が近く、花の女子高生に声がかかるなら、彼に声がかからないなんてあり得ない。むしろ選抜試験と聞いて彼の顔を思い浮かべなかった自分自身に違和感を覚えるほどだった。
難波ムツキはクラスの人気者だ。剣道部で歴然とした実力差を見せ付けながら公式大会には参加せず、真面目に勉強する気配もなく放課後もゲームセンターで遊んでばかりなのに赤点を取った試しはない。家庭科で料理を作ろうものなら、蓮の花が浮かんだ味噌汁を完成させた後につまみ食いや茶々入れに回る。人柄もよく軽口や下品な話題を気兼ねなく言いながら場の空気を読みしかと発言を選ぶことができる。優れた能力と掴み所のなさを備えながら接しやすくて、おまけに強い。一度体育の自習で男子生徒と手合わせしたことがあるが、その中で難波は最も手ごわく、わざとらしくひいひいと喚きながらしっかりと攻撃を捌き、それでいて攻めようとしなかった。結局とどめの一撃も与えられないままチャイムが鳴り、アサヒを含める複数の男子は見学だけで終わってしまった。試合中断で引き分けだと主張した彼に意図を尋ねてみれば「女に手をあげろってか?」の一言。沸きあがった黄色の歓声もあいまって酷く苛立って、彼のすねを蹴りつけた。あの感触は今でも覚えている。
何もかもができたクラスの人気者なら、なるほど、自分より選ばれていそうなものだと納得する。
「確かにあいつならあり得そう」
「だよね。難波くんがきたら聞いてみようよ」
「はいはい」
あの自習以降、ミライが難波の話題を出す回数が目に見えて増えた。ミーハーの気はないと思っていたが、あれを機に憧憬を抱いたと聞かずとも分かる。伊達に親友を続けていない。彼が現れるのを今か今かと待ち焦がれている彼女の瞳はらんらんと輝いていて、何となく面白くなかった。さっき自分に向けられた時は幸福感すら覚えたのに、もはや見る影なしだ。
やがて彼が現れる。「ちーす」と軽い挨拶と共に廊下の窓から身を乗り出して椅子に直接足を乗せる、一連の行儀の悪い登場はクラス全員が慣れたもので、咎めることなく軽い挨拶を返しているのが大半だ。軽薄なやり取りが飛び交う中、ミライはフタバの手を引いて難波ムツキに近付く。
「おはよう、難波くん!」
「おう、はよっさん。どうした加賀宮、ご機嫌じゃん」
「ちょっとね。ところで難波くん、この封書、届かなかった?」
あまりにぶしつけな質問だが、口を挟む暇はなかった。「封書?」首を傾げる難波ムツキに、フタバは黙って手のそれを渡す。難波ムツキはそれの両面をまじまじと眺めた後、わずかに眉をしかめてフタバに突き返した。少々曇った表情に心当たりはない。ただ、フタバの目には、ムラクモ機関の証印を一瞬だけ睨んだ彼の目付きが強く焼きついた。そんな顔をする理由が分からず言葉を詰まらせているうちに、二人の間で話が進む。
「知らねえな。何だよその紙、ラブレター?」
「えっと、ムラクモ機関の選抜試験に選ばれた候補者に届くんだって」
「ふーん、そー。それが杉下に届いたわけ」
「そう。それで、フタバが選ばれるなら難波くんももしかしたらって思ったんだけど」
「俺なんかにそんな立派な通達が来るわけないじゃん」
手をひらひら振ってはっきり否定した難波ムツキは、癖のある髪を掻きながら嘆息した。
「ムラクモ機関主催お料理選手権とかならともかくよ、杉下が選ばれたってことは戦闘系だろ? そんなの俺にはお門違いだって」
「でも難波くん、強いじゃない」
「加賀宮兄や杉下に比べたらぺーぺー同然。俺の雑魚っぷりを見くびるなよ?」
嘘だ。実際手合わせをして且つ眼力に優れたフタバには分かる。難波ムツキが杉下フタバより弱いなど、勝利を放棄しながら冷静に攻撃を捌いていた彼自身が口にしていい台詞ではない。もし卑下する言葉が本音から出たものなら、彼こそ自らの実力を見誤っている。しかし、正直にそれを指摘するには憚られた。小さな黄の瞳にかかる影は深く濃く、誰よりもずっと先、ずっと奥を見据えている、そんな雰囲気を漂わせていて、彼が、浮かれる女子高生らより現実が見えているのではと、そんな気分にさせられた。
彼が彼の言うとおり雑魚で、実力を見誤っているのではないとしたら。
自分よりずっと優れた彼が候補者に選ばれることがないとしたら。
だったら自分が選ばれても仕方ないのではないか。
「……ごめんね難波、変なこと聞いて。ミライ、もういいでしょ」
「でも」
「難波、今度また勝負しよ」
「やだよ、俺に勝ち目ないじゃん」
「そういうのは攻めてから言って」
「簡単に言いやがってコンチキショー」
未だに声をどもらせるミライを引きずって、元いた席に戻っていく。「ごめん」とか細い言葉が耳をくすぐった。その言葉の意味よりも、謝罪の宛先が引っかかる。自らを卑下した難波ムツキにか、それとも彼の卑下によって曇天が戻ってしまったフタバにか。
(師範になんて言おう)
頭の中で展開される数々の拒否の文句、それらのどれが適切か、今はどうにも分からない。
【今はまだ日常】
日常が変貌してからどのくらい経った?
赤い花を踏みつけて、絶命したカエルのマモノを引きずりながら、ふと、平和だった高校生活がまぶたの裏に浮かび上がった。選抜試験の誘いが来た際も非日常が垣間見えたが、その時に非日常に飛び込んだところで、どうせドラゴンはやってきた。フタバが放棄した試験日に人類の終わりが始まったのだから。
勧誘されるままに試験を受けて、候補者であった自分がムラクモ機関の戦力として数えられていたら。たまにありもしない可能性を想像するが、そのたびに首を振って否定した。もしムラクモ機関の戦闘員になっていたら、その時はミライが誰からも守られず死んでいたはずだ。彼女の兄のように、ドラゴンに四肢を食いちぎられて。
翼を生やした巨大なドラゴンの口から零れ落ちたそれをフタバは見た。左腕だ。何度もぶつけ合い、重ねてきた腕だ。二人は僕が守る、その言葉と共に残した紛れもない彼の一部。それ以外の彼は、ごくり、嚥下の音に呑まれて消えた。
片割れの死を目の当たりにしたミライの有り様は酷いもので、虚無を見つめながらアサヒを呼んだかと思えば、彼のあとを追うように外へ出ようとすることが多々あった。このままおかしくなって彼女も死ぬんじゃないか、あらぬ不安がフタバに影を落とす。戦友であるアサヒの死も堪えたが、それ以上に、今も生きている親友が生から遠ざかりかねないのが恐ろしい。食べられた彼の分まで親友を守りたい、その一心で救いとなる言葉をかけた。
「大丈夫、きっと難波が助けてくれる」
これで双眸に光が戻ったのだから、やはりミライにとっての難波は特別な存在だったらしい。
それからフタバは、そこにいない男をヒーローに仕立てあげた。不安定な親友の精神を繋ぐために。あいつはヒーローで、自分なんかよりよっぽど強くて、いつか助けに来てくれる。そんな都合のいい話をずっとミライに言い聞かせる。生死の確認すらできていないクラスメイトを利用することに抵抗がなかったわけではないが、親友が震えている姿を見ると口が勝手に動いていた。ミライはミライでそれを素直に受け取って、難波を英雄視することで片割れの死から立ち直ろうとしている。その方法が利口かどうかは、フタバには分からない。
マモノの死骸は重い。食料とするためにマモノを仕留めてシェルターへ運ぶ生活はもう慣れたもので、ここしばらくで随分と鍛えられたとも思う。備蓄と合わせて食べているとはいえ栄養の偏りは心配だが、救助が来るまでの辛抱だ。救難信号は何度も飛ばしているし、それも先日拾われたと聞いた。もしかしたらカエルを引きずるのは今日で最後かもしれない。
シェルターにたどり着き、連絡をして開けてもらう。通信相手の声は上擦っていて、その奥からも複数人が慌ただしく走り回っている様子が伝わる。これは、もしかして。開いたシャッターに身を潜らせると、やはりたくさんの避難民が一斉に行動していた。焦っている割にはシェルターの雰囲気は明るく、浮ついている。出迎えたミライに尋ねると、彼女はにっこりと、満面の笑みを作った。
「これから救助が来るんだって!」
「ああ、やっぱり? このカエル、無駄だったね」
「お疲れ様、フタバ。もう食料調達しなくてもよさそうね」
ここまで嬉しそうな彼女を見るのはいつ以来だろう。彼女だけでなく、避難民も憂鬱な昨日までと比べて表情に喜びが満ちている。かくいうフタバ自身もその頬を緩めていたのだが。
先日の救難信号を拾ってくれたのは東京都庁で、今は戦線の拠点であり壊滅状態である日本の中心であると聞いた。救助が到着次第、そこへ集団移動するのだろう。拠点を移すならば相応の荷造りが必要だが、フタバの荷といえば財布と情報端末といった必需品のみ。特に準備するものがなく、しかしのんびり退屈を潰すのも釈然としない。ふと、引きずってきたカエルを思い出した。
「じゃ、救助来るまでにこいつ捨ててくるね」
「あ、私も行く」
軽い調子で続いたミライを、フタバは咎めなかった。シェルターの近辺にドラゴンは滅多に現れず、多少のマモノなら自分が片付けられる。何かあれば自分が守ればいいだけだ。腕を残して死んだ彼の代わりに。
――結論からいえば、油断していた。
現れた滅多は大きく、熱く、長い首の先にある口から荒々しい息を吐いている。翼を広げてつんざくような吠え声を上げると、ゆるやかな動きでフタバを睨んだ。
後ろのミライがひいと小さな悲鳴を零している。フタバも悲鳴が込み上げそうになるが、喉に来る前に押し返した。守らなきゃ、強い意志が栓になり泣き言を留めている。
「腹が減ったんなら、これでも食ってなさい!」
ありったけの力で力なきカエルを放り投げても、ドラゴンは意に介さない。べちょりと翼にぶつかったそれを冷静に払い落とすだけだ。
ぐるる、と唸り口が持ち上がる。つうと垂れる唾液は絶望、剥き出しになるぎざぎざの歯も絶望、連想される光景は絶望。戦友が死んだ時と同じだ、色素が削げるほどの絶望が目の前に広がっていた。
右の拳が固くなる。これをそのままドラゴンにぶつけたところで結果はたかが知れている。フタバに立ち向かう力があったら、そもそもアサヒは死んでいない。力不足が彼を左腕のみにさせたのだ。ミライが同じ道を辿ったなら今度は自分が狂ってしまう。そうなる前に、彼女だけでも。
「……ミライ、下がってて」
「……や」
「あんただけでも守りたいの」
「やだよ」
「ミライ!」
「やだ! ひとりにしないで! 一緒に逃げようよ!」
「でも、私が食い止めなきゃ」
「やだやだ! フタバが死んじゃう!」
ミライの叫びとドラゴンの咆哮が重なった。このままでは二人とも食べられてしまう。二人を守って死んだアサヒのように。
そんなのは、絶対にいやだ!
「そこを動くな!」
覚えのない声が轟いた。ドラゴンではない。
いつの間にかドラゴンが疲弊していた。広げた翼を垂れ下げて、時折不器用に動かしている。だらんと下がった頭は憎々しげに男を捉えているが、それもやはり動かし難そうだ。
現れた男はナイフを構えていた。その隣に、彼より頭ひとつ小さな女が、その隣には彼より頭ひとつ大きな男がつく。いつの間にかドラゴンと二人の間に立ちはだかった凸凹平の三人組は、傍からみれば珍妙で、それでも力強く堂々とそこにいる。
三人合わせて装着している腕章は、正義と希望を宿したような真紅に染まっている。
「何とか間に合ったみたいだな。すぐ終わらせるから、しばらくそこにいろよ」
ナイフを振るった平の男が、フタバたちに顔を向けた。ナイフに付着した液体が地に零れる。あれで斬られたドラゴンは、筋肉を鈍らせる毒を盛られたのかもしれない。
自由を奪われたドラゴンは、それでも戦意を露にして長い首を振るう。大気が揺れるその衝撃を、一歩前に出た凸の男が真正面から受け止めた。受け止めても尚、吹き飛ばされることはなく男は二本足で立ったままだ。左手で同等の衝撃を作り出し相殺したのだとフタバは理解した。男の両手を保護するグローブがぎしりと鳴る。
「うぜぇんだよ」
大きな下あごを突き上げる拳は、フタバの攻撃よりも重く力強い。一目で分かる、圧倒的だ。
「こーちゃん、離れて!」
場にそぐわない、甘さすら感じる愛らしい声が響く。応じた凸の男が退いた刹那、凹の女が声を上げる。ぶわり、と紅蓮の焔がドラゴンを包み込んだ。どこからともなく現れた空気すら焦がす強烈な焔は、ドラゴンの全身を覆い隠して高く天へ昇っていく。頭のてっぺんから尾の先にまでくまなく焼け跡を刻み、確実にドラゴンを蝕んでいく脅威。最後の力を振り絞るような咆哮は、強い熱を帯びていた。炎が消えて巨体が崩れる。
あっという間だった。それぞれが一撃ずつ入れただけで、あっけなく強大な絶望が地に伏した。ミライと寄り添いあっていたフタバはただ呆然と、絶望を打ち砕いた珍妙な希望を眺めるしかできない。
フタバがドラゴンに勝てないように、ドラゴンはこの三人組に勝てない。そんな確信が胸に焼きついた。
「大丈夫? どこも怪我してない?」
凹の女はフタバやミライよりも背が低くて頼りない。小学生のような容姿で、肩を押したらいとも簡単に倒れそうなのに、彼女は確かにドラゴンを焼き殺した。その髪に似た紅蓮の焔で。
「……命拾いしたな」
凸の男はやけに縦に長く、フードの隙間から覗く悪すぎる目付きと相まって攻撃的な風貌だった。それでも体ひとつで盾と矛の役割をこなした彼は、フタバと同じく肉弾戦を得意とするのだろう。身のこなしから特定の型はなさそうだが、絶望を打ち砕く力があるなら独学でも充分に希望だ。
「じゃ、改めて。俺たちはムラクモ13班だ。あんたたちを助けにきた」
平の男は、他二人と比べたら体格に特徴はなかった。光差す爽やかな笑顔は、いの一番にドラゴンへ斬りかかっていた様から連想できるものではない。大きなリュックを背負っているにも関わらず、フタバたちを抜いてドラゴンへ駆けつけたところから、相当素早いことが窺える。一見、自分たちと年は離れていなさそうなのに。
凸凹平の彼らこそがムラクモ13班。ドラゴンに刃向かう力を得た、人類の希望の権化。それが今、目の前に。
「……ねえ」
ずっと傍にいたミライが、久々に喉を振るわせた。そよ風のような力ない声を受け取ったのはフタバだけ。
「……難波くんは?」
親友の心を支えていた希望は、命を救った凸でも凹でも平でもない。
難波ムツキはそこにいない。
【こんにちはヒーロー】
難波ムツキが都庁に現れたのは、都庁内の集団失踪の後だった。
人口が減ったことによる奇妙な静けさに慣れてきた頃、暇を潰してエントランスを歩いているとファクトリーの窓口前に目が止まる。やや高めの上背、浅黒い肌、癖のあるこげ茶色の髪、頭を縛る緑の布。見間違えるはずがない。ミライを支えた虚空のヒーローがそこにいる。
「難波!」
難波ムツキの目が見張る。先ほどファクトリーから受け取ったらしい長物を抱えたままフタバに歩み寄った。
「杉下。無事だったのか」
「なんとかね。……で、難波、それは?」
基本的に武器の携帯が認められるのは自衛隊か、ムラクモの戦闘班だけだったと記憶している。彼が持つ長物は恐らく刀だ。雑魚を自称した彼がそれを提げる違和感から尋ねてみると、ばつが悪そうな反応をする。
「んー、まー、その気がなくても持っとけって」
「その気? 持っとけって……」
言葉が途切れたのは、彼の腕にある色が目に入ったから。左上腕に巻かれた真紅の腕章、それがムラクモの証だと知ったのは都庁に保護されてからだった。
彼がムラクモだったとは聞いていないが、しかし腕章が妙に似合っている気もする。戸惑う頭のまま真紅を凝視していると、視線に気付いた難波ムツキが僅かに目を泳がせる。
「話すと色々あるんだけど、あんま言いたくねーな」
いつかの日、通達が来る可能性を一蹴した男があの腕章をつけている。その事実は提げられた刀と同様、強い違和感を放っていた。言いよどんでいるのは違和感の正体そのものだろうと察したフタバは、それへの追究を一旦諦める。
「じゃあ、ちょっと話さない? あんたの事情は言っても言わなくてもいいから。……私も色々、話したいことがあるから」
「まじで?」
「まじで。忙しいならいいけど」
「いんや。暇だからここに来たようなもんだ」
晴れ晴れとした様子ではないが拒絶する気配もない。対話そのものに抵抗はないようだ。そうと決まれば話は早く、エントランスに備わった椅子に二人で腰をかけた。人一人分の隙間を空けて横並び、顔は見たい時に見れればいい。
切り出したのは宣言どおりフタバで、自分でも納得しきれていない現状を拙いながらに伝えた。アサヒが死んだこと、ミライが不安定になったこと、彼女を立ち直らせるために難波ムツキの名前を利用したこと、救助されてから日が経った今も難波ムツキの存在に縋っている節があること。時折言葉をどもらせながら、震える声で一度に語る。
全てを話し終えた時、聞こえたのは大きすぎるため息。
「お前、なんちゅーことしてくれてんのよ」
がっくりとした語調で頭を抱える彼に意見する資格はない。事情があるとはいえ、それだけのことをしてしまったのだ。
「勝手に名前使ってごめん。でも私じゃ駄目だし、アサヒでも駄目だったから、あんたしかいなかったのよ」
「いや、そこは仕方ないんだけどよ……」
ミライの剥き出しの憧憬は彼なりに感じていたらしく、それについては渋々ながら納得していた。ならば、なんちゅーこととはなんなのか。
「……なんで俺なのかね」
刀を撫でて目を伏せる難波ムツキが、ぐったりと呟く。
「あいつ、男見る目なさすぎだろ。お前が過保護になってるからだぞ」
「なによ、卑屈?」
「冷静かつ客観的な評価の結果。俺はヒーローなんかにゃなれねえんだ。まあ、加賀宮も、落ち着いたら自然と気付くとは思うけどよ」
「なんか、ごめん」
「謝るな。お前も加賀宮も必死だったんだ。責める気はねえ」
「……じゃあなんで、あんた、そんな複雑そうな顔してるの?」
眉間にこれでもかとしわを寄せた形相で「んな顔してねえよ」と毒づく。やはり思うところはあるらしく、しわは深くなるばかり。責めるつもりがないとは、フタバとミライに向けられた言葉だ。ならば彼は、違う誰かを責めているのか。
「……なんかあった?」
迷惑をかけている分、救いになりたい。単なるエゴから来るものでも、その気持ちに偽りはなかった。
また盛大にため息を吐いた難波ムツキは「色々あるから、長くなるぞ」と前置きをしてから、顔を上げる。
「俺さあ、まじで笑えないぐらい超絶情けない奴なのよ」
はは、と乾いた笑いがひとつ。
「俺の実家さあ、ぶっちゃけやばいんだよ。難波家といえば知っている人は知っている結構なブランドでな。簡単に言っちゃえば、超天才の血を継いでいる、天才を生ませる家系なんだ。優秀な遺伝子をぞくぞく取り込んで、優秀な人材をぞくぞく出そうって家訓で百年以上は続いている。で、その家に生まれた俺はというと、凡人よりは優れているけど難波の名前を背負うには随分と雑魚ですねーって、そういう……難波の面汚しって烙印を押されたんだ」
クラスで輝いていた自身を雑魚呼ばわりするのは、高校なんて狭い箱庭より広く深い世界を知っていたから。身の程を知った上で、箱庭の人気者を振る舞っていたから。
「超天才の祖先様は戦闘能力が特に秀でてたらしくてさ、素手で熊を倒したとか初めて握った刀で百人斬りをやってのけたとかくしゃみで嵐を起こして野盗一味を追い払ったとか、嘘みたいな伝説ばっか残してやんの。だから難波に生まれた奴は、超天才と比較するために戦闘能力が重要視されるんだが、俺にはその辺に誇れるような能力はなかったの。申し訳程度で剣術を磨いても、親戚にもっとすごい奴らがいるからいまいち立場がなくって、でも中途半端な剣術でも放棄したらいよいよ苗字がなくなるから、後にも先にも行けずじまい。俺が難波として誇れるのは剣術じゃなくて料理のほうだし、俺も刀より包丁握ってるほうが楽しい。ご親族様はそれを良しとはしないんだが、このご時世では料理のほうが役に立つじゃん、戦闘能力なんて振る舞う機会がないほうが平和じゃん、とか、しょーもない見栄で張り合ってた。でも、あのトカゲどもがやってきやがってそうも言ってられなくもなってさ。ほんと、笑い話にもなんねーよ」
髪をくしゃりと掻きながら、心底参ったように息を吐く。
掴み所がなかった彼の本質を始めて目の当たりにした気がして、それでも言葉は出てこない。
正直、フタバの想像に及ばない話だ。気持ちを重ねて心から頷くことが困難なほど、遠い世界。それでも彼は本気で嘆いているし、その感情は痛いほど伝わった。だからこそ、痛感する。
自らを誇れない彼を、どうしてヒーローに仕立て上げてしまったのか。
うずき出す。後悔がふつふつと。
「ドラゴンが来た日は実家にいたから、難波家一同でムラクモに合流しようとしたんさ。ムラクモとは結構付き合い長いし、いざとなったら手を貸すって協定もあったから、とっとと連携したほうがいいって案には総員同意。でも家から都心は遠いわ、車もやられたし足で移動するしかないわ、そしたらドラゴンもマモノも山ほど立ちはだかってくるわで、もうめちゃくちゃだ。ここにたどり着くまでに、何人もの難波が死んでったよ。俺よりずっと強い奴も、俺より格好いい奴も、頭を撫でてくれた奴も、唾を飛ばして叱り付けた奴も、続々食べられた。いや、もう、まじで逃げるだけで命からがらだったね。二十八人もいたのに、都庁に辿り着いたのは七人ぽっちだ」
言い終えてから吐き出した一息に、一体どれだけの感情が詰まっているのだろう。
「俺がもっと使える奴だったら、もう少し残ってたかもしれないのによ」
「でも、あんたは生きてるじゃない」
ほとんど無意識に言葉が飛び出る。口を挟むべきではないと思いながら耳を傾けていたが、いよいよ我慢が利かなかった。弱くても、情けなくても、生きているならいいじゃんか。一点の曇りのない本音は、しかし何の効果もない。難波ムツキが力なく頭を振る。
「違う。そうじゃない」
固まったふたつの拳がぶるりと震える。これこそが彼の深淵なのだと察するには遅すぎた。
「ドラゴンと向き合った時、無理だって思った。こいつらには勝てない、こいつらに難波は通用しないって、理由もなくそう思って、腰を抜かしちまったんだ。刀を抜くどころか、自分ひとりで逃げることすらできなくて、そんな情けない俺を――親父とお袋は庇ったんだよ。俺を守るように立って、難波は負けない、それだけ言ってドラゴンに立ち向かっていってさ」
脳裏にぼんやりとひとつの笑顔が浮かぶ。男にしては頼りない痩躯で、それでも優れた戦闘術を持った緑の髪の彼。親友の兄で、かけがえのない戦友。
「……食われたよ、二人して。ばっくりと上半身を持ってかれた」
フタバとミライを守るように、左腕を残して散った、今は亡き命の恩人。
「俺がさあ、もっと使える難波で、もっと強靭な精神を持ってたならさあ、親父もお袋も無事だったのかなって。そう思うと、やり切れねえんだよ……」
ぐしゃりと頭髪を握りつぶす様は、彼の悔しさをありありと物語っている。伏せた顔を覗いてはいけないと直感して彼の姿勢を真似た。白いフロアが目に入る。
難波ムツキは自分と同じだ。目の前で親しい人を失い、自らの無力さに打ちひしがれている。しかも彼が亡くしたのは実の両親で、二人の死に間接的に関わってしまっている。元々根強かった劣等感を一層増強させてしまったのだろう。守るべき対象がそばにいて、強くならざるを得なかった自分とは違う。弱かった彼は、より一層弱くなった。
「……こんな惨めで情けない俺が、前線に立って戦えるわけないじゃん。この腕章も、この刀も、とりあえずで持つには重すぎるんだよ」
「……ごめん」
「謝るなって。頼むから」
彼は、フタバやミライを責める気はないと言った。その真意が今なら分かる。彼は誰よりも彼自身を責めているのだから。
難波ムツキは小さく縮こまり、ただ拳や肩を震わせていた。ヒーローと呼ぶにはあまりに頼りない姿は、到底ミライに見せられるものではなさそうだ。
【さようならハーヒーロー】
「杉下、ちょっと」
居住区に姿を現した難波ムツキがフタバを呼ぶ。そばにいたミライが眉を下げて二人を見遣るも、すぐに笑みを作って「いってらっしゃい」と手を振った。誘いを断る理由もなく、ノーとも言えない状況に、フタバは嘆息した。
「お前、まだ動ける?」
近寄って開口一番がこれだった。首を傾げると、空を切って飛んできた拳ひとつ。受け止めるのは他愛もない。
「うん、いけそうだな」
「なに? マモノ退治に付き合えって?」
「いやいや、都庁内で事足りますって。ま、歩きながら説明するわ」
ドラゴンが姿を消して平和は戻ったが、日常はまだまだ遠い。都庁の居住区から離れることはできず、ミライの精神も不安定なまま。クラスメイトの難波ムツキと顔を合わせる機会も少なく、たまに話すにしても偶然はちあわせてこちらから声をかけるのが常だ。そんな彼が向こうから接触を図る理由とは。
「ああ、そうだ。俺含む難波家一同、ムラクモ13班に任命されました」
「……はぁ!?」
驚きのあまり素っ頓狂な返しをしてしまう。13班といえば、ヒーローの代名詞で、人類のシンボルで、自分と親友を救った命の恩人ではないか。頼りない存在感でありながら、しかと世界からドラゴンを追い払った英雄たち。フタバは彼らを知っている。
「あの三人はどうしたのよ? 凸平凹の三人組」
「あれ、知ってるのか。城島部隊――先代13班はドラゴンとの戦いで随分と疲弊しちまって、当分は前線に出れないらしい。で、今までマモノの露払い程度でお手伝いしていた、いわゆる13班準所属だった俺たちが、繰り上がり式で選ばれたわけ。まあ、ドラゴンもいない今、しばらく出動命令なんて出ないだろうけどよ」
「はあ」
ドラゴンへ果敢に立ち向かっていった三人が退いて、ドラゴンに腰を抜かした男が任命される。その違和感を思うと、難波という姓の重さが一片だけでも伝わってくる。
「で、新生13班こと難波部隊の中には、前線に出すにはだいぶ不安な奴がいてさ。そいつを鍛えるには、お前が相手になるのが一番かもって思ったわけだ」
「別にいいけど、なんで私なの? あんたや他の難波さんたちがやればいいじゃない」
「俺たちじゃ駄目だ。つうか、それ以上にお前が適任だ」
「へえ」
肯定はするも、釈然としないのが本音だ。優れた人材が揃う難波家が駄目だから自分が選ばれた、その判断に裏がないかと勘ぐってしまう。難波家は、ドラゴンを追い払った13班に劣るかもしれないが、ムラクモ候補者に選ばれただけの女子高生より勝っているはずだ。そんな自分が相応しい相手だという難波とは、一体。
「どんな人なの? その、不安な奴って」
「あー……」
しばし言葉に迷った後に、おもむろに吐き出した。
「難波家最年少」
案内された先は、ムラクモ居住区のトレーニングルームのひとつだった。どんなものかと期待してみれば、椅子やトレーニング器具のひとつもなく、壁がクッション状の柔らかい材質で作られたこと以外は何の特徴もない立方体の空間で、質素な現実に肩透かしを喰らう。待っていたのは三人の人間で、うち二人は、やってきたフタバと難波ムツキを見つけるなり寄ってくる。
「君がムツのクラスメイトか。俺は難波イチヒだ、今日は応じてくれてありがとよ」
「難波イツカでーす! よろしくー!」
赤いスーツをきっちりと着こなした眼鏡の男と、濃茶の髪を長く垂らしたスタイルの良い女が順に名乗る。二人とも浅黒い肌にやや高めの上背といった、難波ムツキと似た特徴を併せ持っている。そういえば全員が彼の親戚にあたるのか、と今さらながら実感した。
二人と、奥にいるひとりの腕にはいずれも真紅が巻かれている。それでも居心地の悪さを感じないのは、ひとえに難波ムツキと親戚らの人柄だろうか。
「ほら、トウシくんも挨拶して!」
動かなかったひとりにイツカが声を飛ばす。トウシと呼ばれた彼は素直に足を動かした。短く切り揃えられた濃茶の髪はイツカと通じるものがあるが、背は低く肌も白い。背はこれから伸びるだろうが、肌色が違うだけでやけに浮いていた。
「……難波トウシです。今日はよろしくお願いします」
悲嘆しているのかと疑いたくなるような憂いのある口調。声変わりもまだなのに、どうしてそんな喋り方になるのだろう。最近の子供は分からないものだと内心ため息を吐きながら、本日の相手に手を差し伸べる。
「杉下フタバよ。こちらこそよろしく」
人気者のクラスメイト曰く、今年十四歳になる難波トウシは、肉弾戦を得意としながら経験が決定的に欠如しているらしい。それ以上は聞いていないが、これだけ若いなら経験不足にも納得がいった。ドラゴンとの戦いでも年少者だからと前線に出させてもらえなかったのだろう。ただでさえ意気揚々とドラゴンへ挑んだ実力者が大勢食われたのだ、無理もない。
イツカが用意してくれたプロテクターを装着して、四肢を動かし体をほぐす。都庁に保護されて以降ろくに実戦をこなせていない。ムラクモからの勧誘はあっても、ミライを放っておけないのと自信の欠如で辞退した。それからも鍛錬こそ欠かさなかったが、人と拳を交えるのは久々だ。自然と高揚する気分に従い空を切っていると、背後に聞こえる息遣い。反射的に足を上げながら振り向くと、寸でで蹴りを止められながら平然と立っているイチヒの姿があった。
「やるねえ、フタバちゃん」
「難波さんこそ、動じないんですね」
「ファーストネームで呼んでくれねえか? うちみんな難波だからよ」
「あ、はい」
足を下ろしてから改めて尋ねる。
「で、イチヒさん、どうしたんですか?」
「んーと、フタバちゃんはこれからトウシくんと手合わせすんじゃん? それについてなんだけど」
「はい」
「なんて言えばいいのかなー。とりあえず、ええと、フタバちゃんにはがんがん攻めていってほしいんだ」
要領を得ない言葉からでは意図を汲み取れない。自分なりに咀嚼して問い返す。
「子供だからって遠慮しないで全力で行けってことですか?」
「そんな感じで……あ、いや、違うな。全力は全力でも、ひたすら攻撃に回ってほしいっつーか。相手の出方を窺う、とかじゃなくて」
「私から仕掛け続ければいいんですか」
「おー、そうそう、そんな感じ。トウシくんは防御に専念するから、そのつもりで頼むわ」
かっかと快活に笑うイチヒとは裏腹に、フタバの眉間にしわが寄る。こちらが一方的に攻めて、相手がそれを守っていく。鍛錬の内容はいつかの実習を彷彿とさせた。あったはずの隙を突かず、攻撃を放棄して自らの身を守り続けることで引き分けまで持ち込まれた、あの件は、一年以上経った現在も腹立たしい記憶として残っている。
ぐるりと室内を見渡せば、何かを懸命に伝えているイツカとそれを真摯に聞いているトウシ、ひとりでせっせとマットを敷いている難波ムツキが目に入る。ふと、顔を上げた難波ムツキとばっちり顔を合わせてしまった。ぱちり、相手が大きくまばたきをしたのが気に障り、じろりと睨み返してやる。それでも素知らぬ様子で顔を背けた彼の態度が気に入らないので、あとですねを蹴ろうと決めた。
お互いに準備が整い、距離をあけて向かい合う。イチヒが提示したルールは、どちらかが決定打を与えればそこで終了といういかにもなものだった。当然、寸止めでも決定打になり得ると判断されれば条件は満たされる。フタバも決定打を直接叩き込むつもりは毛頭なく、トウシも強く言い聞かせられたらしい。これは戦闘だがそれ以上に試合なのだから、意識を奪う必要はないのだ。終了条件のとおりお互いに攻撃と防御は認められているが、結局攻防は偏るのだろうとフタバは睨んでいる。これはあくまでトウシの防御特訓なのだから、自分は攻めればいい。あの日みたいに。
開始の合図と共に、左足をばねに踏み込んでブローを仕掛ける。涼やかな表情で受け止め流されれば、すかさず体をひねって回し蹴りに移行する。これも受け止め、流された。一度退いたがすぐ距離を詰めて軽く速い連撃を繰り出す。やはり全てあしらわれた。相手の表情は変わらない。
攻撃を止めないまま、胸中をくすぶる鬱憤に舌を打つ。状況が違うと分かっていても、どうしても体育の実習が頭によぎった。女だから攻撃しなかった、彼の意図がどこまでも腹立たしい。難波ムツキと手合わせするまでに十人近い男子生徒をなぎ倒した自分を、それでも女性扱いして対等であろうとしなかった、なんて、フタバからすれば侮辱もいいところだ。可愛らしい女の子なんて十一年前に止めているのに。
今まさに対峙しているトウシに、過去の難波ムツキの影が重なる。その高い鼻をへし折ってやろうと顔目掛けて正拳を突くも、正面から受け止められる。不動の表情、そこに一石を投じたい。
「舐めんじゃないわよ!」
腕全体を使った右フックは、威力があるものの生じる隙が大きい。それでもトウシは案の定、隙に付け入らずしなやかに回避した。お互いの髪の毛一本散りやしない現状が、フタバの感情を荒らしていく。
ハイキックも止められて、止まらない憤怒が加速した。
「守ってばかりじゃ終わらないのよ! あんたも攻めてきなさいよ! できるでしょ?!」
唾が飛ぶ勢いで怒鳴りつければ、ようやく表情に変化が生じた。酷く困惑した、いっそ泣きそうな顔だった。「で、でも」どもった声に否定が続くと踏んで、叫ぶように打ち消す。有無は言わせない。
「やれって言ってんの! そんな甘っちょろい覚悟で戦えると思ってんの!?」
外野からフタバへの制止やトウシへの呼びかけが飛んでくる。躊躇してはいけないとフタバも負けじと追い打ちをかけた。「さあ!」掛け声と共に後退して、挑発と共にマットを蹴る。狙うはどよめいている頭部、その下あごだ。
「迎撃してみなさい!」
「う、うう……っ!」
アッパーカットが止められた刹那、足と手首が順番にさらわれ、くるりと世界が回った。反転する景色の軸にあった濃茶のつむじに、やればできるじゃん、とひとり感心する。背中から全身に衝撃が走る。強烈な背負い投げの余韻に動けないでいると、自分を見下す赤い眼差しに気付いた。とても涼やかだが、硬い意志を秘めた瞳、釘付けになりそうなほど鋭くてきれいだ。
「すみません」
ひゅ、空を裂いて振り下ろされた貫手がフタバの鳩尾を貫いた。
意識を取り戻して、最初に見えたのは天井だった。ゆっくり体を起こすと、さっきと同じ部屋だと分かる。すぐそばにいたらしいイツカが顔を綻ばせて「フタバちゃん起きた! よかったー!」と過度な抱擁をかます。ふくよかな胸が押し付けられて息が詰まる。
やがてイツカの声を聞きつけた他三人も寄ってきた。まずはイチヒが苦笑まじりにイツカを引き剥がし、次いで難波ムツキがボトルを投げつけてくる。とっさに受け取れば水が揺れる音が聞こえ、その厚意に感謝し喉に流す。渇いた体に安らぎが染み込んでいく。
「あの、フタバさん、大丈夫ですか?」
フタバの正面で礼儀正しく正座をしているトウシは、この世全ての罪を背負ったような重々しい形相を浮かべていた。発した声の質量も相当なもので、耳に入れるだけで憂鬱が伝染してしまいそう。巻き込まれまいと抵抗するため、返事はできるだけ軽やかに。
「当然。やわな鍛え方はしてないのよ。そりゃ、あんなに鮮やかに決まるなんてちょっとびっくりしたけどね」
「すみません……」
「謝んないの。あんたはしっかり決めたんだから」
「違うんです。本当はすんでのところで止めるべきだったのに、僕が加減を間違えたから……」
「加減?」
合わせる顔がないと言わんばかりに目を伏せるトウシに疑問が生じる。彼の言葉の真意が知りたく、難波ムツキを凝視するがあっさりと背かれてしまった。次にイツカを見れば、目が合った後に別のひとりへ眼差しを向け始め、フタバも必然とそれを辿る。注目が集まってしまったイチヒは、気まずそうに頬をかいた。
「まあ、あれだ。何ていうか、フタバちゃんに直接的な攻撃を与えないってのも、トウシくんの特訓内容に含まれてたんだ。だから、鮮やかに二手で終わらせたのはいいけど、まじで鳩尾突いて意識奪っちゃうのはよくないなーって。トウシくんが顔をしかめてるのはそういう話だ」
「本当にすみませんでした」
深々と頭を下げる姿に、難波のことごとくがフォローを入れない。難波を知らないフタバからすれば、その空気は異様だった。そもそも相手を傷付けないというのは組み手の大前提で、熟練者が特訓に組み込むようなものではない。加減を間違えたと彼は言った。加減を間違えたからフタバの意識を奪う結果になった。どうして間違ってしまったのか、加減というものが不慣れなのか。それに、加減を間違えて腕を折ったならまだしも鳩尾の一突きは後遺症もない、それなのに、彼の過ちを嘆くこの雰囲気はなんだ。
ばちんと脳裏にひらめいた予想は、釈然としないもの。
「これ、手加減の練習だったんですか」
口に出してみればひやりと部屋が凍りつく。だじゃれを言ったつもりはないと内心毒づくも、声に出した語意に怒気が含まれていることをフタバは自覚していない。「聞いてませんけど」
ひとりが俯き、ひとりが慌てふためいて、ひとりは誰が何を言い出すかときょろきょろ目先を変えている。その中で零れた嘆息は、押し黙っていた難波ムツキのものだった。
「言ったらお前、怒るだろ」
「当たり前でしょ。つか、言わなくても怒るし。私が適任っていうのも、見た目が弱そうだから?」
「よく分かってんじゃん。実力を知ってる奴や強そうな奴が相手だったら、そういう練習にならないだろ」
「あ、そ。じゃあ女の子で弱そうでそれでも動ける私がベストってわけね。納得。でも結果は失敗じゃない」
正座したまま縮こまるトウシを一瞥すれば、もう一度「すみません」と飛んでくる。海より深い反省はしかと伝わったが、それで気が治まるはずもない。硬い表情で突っ立っていた難波ムツキのすねを蹴りつけ、上がる悲鳴から耳を塞ぎトウシの前へ歩み寄る。
「トウシくん」
「なんですか」
「寸止めとか、手加減とか、そういうの苦手なの?」
「……はい。相手の戦意を削いだり、相手を無力化することが、どうしても。僕は、力加減ができないから、命を奪う戦い方しかできません」
「命を奪う?」
「僕ができるのは、肉体を使って敵を殺すことだけです」
震えた声色でそっと告げる姿は懺悔に似ていた。
敵を殺すことしかできないという告白はあまりに現実味を帯びていない。だが他の難波の顔を見れば、自ずと説得力が表れる。
「トウシくんの戦闘技術に関するポテンシャルは、難波の中でもぶっちぎりだから」
挙げ句、嘆くように言われてしまったら、現実味のないそれが真実となる。
経験が足りない故に加減ができない。ドラゴンがいない今、立ちはだかる脅威はたまのマモノと、それ以外は人間だ。なるほど、前線に出すには心許ないのも合点がいった。対人は対人で、相応の戦い方がある。戦意を削ぐことを目的とした戦い方も時には必要だ。
「……私はトウシくんのこと知らないけど、さっきので君が強いってことは分かった」
「でも、それだけじゃ駄目です。フタバさんを傷付けないはずが、急所を突いて意識を奪ってしまった」
「その辺はとやかく言うつもりはないわ、自分で反省しているみたいだし。だけど、これだけは言わせて」
膝を折り、弱々しく光を宿す瞳を見つめる。先ほどの硬い意志をすっかり喪失させた、年若い少年の瞳だ。
「力ってのは、持ってるだけじゃ意味がないの。きちんと使えて、使いこなせて、それを生かすことで、初めて価値ができて、自分の実力になるの」
ドラゴンと対峙すらできなかったフタバは、その実力を得ていなかった。使いこなす必要があるほどの、大きな力を持っていなかった。
だがトウシは違う。使いこなせないほどの力を秘めてそれに振り回されているだけだ。きちんと力の使い方を知れば、彼はとんでもない実力を手に入れる。難波の名に相応しい天才になる。
可能性の種が目の前にあるのなら、やることはひとつだけ。
「トウシくんが立派になるまで、いくらでも付き合ってあげるわよ。次から加減を間違えたらそのたびにすね蹴るからね」
彼が花開くその日まで、水となり栄養となればいい。それこそが自分の力の価値で、自分の実力となるはずだ。
差し出した手の平は、硬く硬く握り返された。
【希望の種】
あの鍛錬から難波家と接する機会が増え、鍛錬を続けているうちに生き残った七人全員と接した。得意分野等の詳細な情報は知らずとも、ひとりひとりと人を介さず話せる仲になっている。初めてトウシと手合せしてから半年以上、それだけの時を難波家と過ごした。成長期のトウシは声変わりを迎えて身長や四肢をぐんぐん伸ばし、長い手足に支えられる上背はとうにフタバを追い抜いていた。しかし陰気で真面目な性格に変化はなく、やや憂いのある喋り方も相変わらずだ。最初の頃はしゃっきりしろとすねを蹴っていたが、あまりに効果が薄いのでこちらが早々に音を上げた。喋り方を含めて彼なのだと認識を改めざるを得なかった。人格はどうあれ実力があればいい。事実、初めて拳を交わした日と比べて、トウシは見違えるほど強くなった。筋力やリーチ、隙のなさはもちろん、才能の制御においてもだ。
ドラゴンがいない日が当たり前になった日本で、どれほど13班が必要とされるかは分からない。それでもその立場は必要だからと新生13班に収まっている彼らは、必要とされるまで己を磨き続けている。禁欲的な姿勢はあまりにも立派で、不安が生じるほどだ。代わりである彼らの代わりはいない、その現実がひどく痛い。
先代13班を担っていた凸凹平の三人は、現在は議事堂でリハビリを重ねているらしい、とは、人づてに聞いた話だ。これから情報元のところへ行く。
親友に会いに行く。
三週間ぶりに会ったミライは、より線が細くなっていた。長い緑の髪を垂らして、にこりと微笑みを貼りつけている。表面こそ明るいが、やはり輪郭が頼りない。
医務区内に作られた庭を正面に見ながら、ベンチに座って横並び。命を預けるフロアであるのに、流れる空気はとても穏やかだ。
「こうやってゆっくり話すの、久しぶりだね」
「ごめんね、顔出せなくて。最近どう?」
「楽しいよ。フタバに会えなくて、ちょっと寂しかったけどね」
家族もろとも行く宛を失くした学生の中には議事堂内の簡単な作業を買って出る者も多い。ミライもその一人で、医務区を手伝っているという。もっぱら子供たちの相手をする日々だと聞いた時はつい笑ってしまった。
「難波くんはどう? 元気にしてる?」
「何も変わりなし。いつだってのうのうとしているわ。何度蹴ってやったか」
「ふふ。フタバも難波くんも相変わらずなんだ」
「それを言うならミライだって」
線の細さにはあえて触れない。難波ムツキへの依存も鳴りを潜め、アサヒの死からも立ち直り、生死の知れない両親のことや潰れた実家を目の当たりにしてもこうして笑っていられるのだ。強くなった彼女に万が一はないはず。限りある食料で繋いでいるうちに肉が落ちただけだろう。
無意識に痩躯を凝視していると、ミライが「どうかした?」と首を傾ける。意識が現実に戻ったフタバは、適当に言葉を繕いながら眼差しを浮かせる。すると、ミライの向こうに人の姿を見た。見覚えのある、燃えているような赤い髪の小さな女だ。ひざに傷を作りべそをかいている子供の前で屈み込み、あの甘い声で「大丈夫だよ」と子供の頭を撫でている。ふと人差し指を立てて、くるりと回した。「いたいのいたいのとんでいけ!」呪文を思わせる綴りが響き、それが染み込んでいくように、みるみるうちにひざの傷が塞がっていった。驚愕する子供と、フタバ。対する赤い髪の彼女はにんまりと柔らかい頬を持ち上げていた。
いつの日かドラゴンを紅蓮の炎で包み込んだ凹の女は、人を癒すこともできるらしい。ドラゴンを倒した英雄の実力を改めて目の当たりにし、呆然と眺めるしかできない。
「遠坂さん、すごいよね。あんなに小柄なのに、ドラゴンと戦ってたんだもん」
しみじみと語るミライに心から同意する。
「本当。あんな小さい女の子が人類を救ったなんて、誰が思うんだか」
走り去る子供を見送った凹の女は、行き違いで現れた男と二、三度言葉を交わしてから仲良さげに去っていく。男のほうにも見覚えはあった。特徴的なナイフやリュックこそないが、恐らく平の男だ。
「あの二人と、もうひとりのフードの男が、先代13班か」
「全然そんな風に見えないよね。一年前よりずっと弱くなっちゃったみたいだし。でも、フタバも私も、あの人たちに助けられたんだよね」
「そうだね」
鮮やかにドラゴンを倒した三人は、紛うことなき命の恩人だ。自分たちを真に救ったのは、アサヒでも難波ムツキでも、ましてや自分自身でもない。
感嘆の息を吐いたミライがやや湿った声色で話し出す。
「みんな、すごいな。私と大して年変わらないのに、戦う力を持っている」
「みんなって?」
「遠坂さんたちに、フタバに、難波くんに、あとアサヒも」
「……え、遠坂さんってあの赤毛の人?」
「うん」
「大して年、変わらないの?」
「高校生だよ。私たちのひとつ下」
「……てっきり小、中学生ぐらいかと」
「ふふ。私もおんなじこと思ってた」
柔らかい笑みを浮かべている彼女の双眸が曇っているのはどうしてだろう。ドラゴンが来る前までは恒星にも似た明るい眼を持っていたのに。それを濁らせた非情な現実は、既に過去となったのに。
「……私ね、たまに考えるの。もし私が、きちんと武道を習ってて、フタバたちぐらい強かったら、アサヒも生きていられたのかなあって」
息が詰まった。幼い頃から武道を拒んでいた彼女が、戦うのが怖いと泣き喚いたのと同じ口で、正反対のもしも話を語ったことに驚きを隠せない。
しかし不毛な考えだとも思う。誰も彼女に力を求めていないのだ。力が至らなかった自分やアサヒはともかく、戦う術を持たないミライがそれを願うのはどこか筋違いだ。
「私だってそうだよ」
あんたはそんなこと考えなくていい、という意味合いを含めた返答に、ミライは困ったように笑う。
「フタバはそうだろうね。でも私もそうなんだよ」
「仕方ないじゃない、ミライは戦えないんだから」
「そう、私戦えないんだよね。だからちょっと寂しいんだ」
「寂しい?」
「フタバと難波くん、仲良くやってるでしょ。そこに私もいたかったなあって」
言葉どおり寂しげに目を細めて、ゆっくりと二の句を継ぐ。
「強かったらトウシくんって子の特訓にも付き合えるのに。それから、もしも強かったらアサヒも生きていたのかな、って連鎖的に考えちゃって。アサヒはもう、どうしようもないのにね」
アサヒは、としっかり告げた。つまり、フタバと難波ムツキの隣に立つのはまだ取り返しがつく、彼女はそう思っている。
寂しさを埋めるための手段として、戦う力を欲している。
浅ましいなどと言う権利はない。理由なんて人によりけりだ。彼女に戦う力があったら、親友を守るために気を張り続けた自分はどうなる? そんなことを考える自分こそが浅ましくて、やはり咎める権利はない。
「ミライはそのままでいいよ。ミライの分まで私が強くなって、私がミライを守ればいい」
かけてほしい言葉ではないと百も承知だ。眉を下げた悲しげな表情も覚悟していた。胸が痛まなかったといえば嘘になるが、それでもフタバは守りたかった。親友と、絶望に呑まれた東京で親友を守りきった自分を。
「私があんたを守るから」
【欲しかったもの】
絶望とは存外静かなものだ。外野の叫びや喚きは認識こそできるがまるで耳に入ってこない。聞こえるものは鼓動の声だけ。あの子がいない事実に焦燥し大声を上げて泣いている。
東京の空にドラゴンが現れ、ひび割れたコンクリートに赤い花が咲き乱れた。
先のドラゴン戦役からわずか一年しか経っていない。恐怖する人々を横目に見ているのに、フタバにはドラゴン再襲撃の実感がわかなかった。一年前の悪夢がそのまま眼球に映し出されたやら、一年前の悪夢が今日を示した正夢だったやら、そんな考えが現れては消えていき、現状を真正面から受け止められずにいる。今、フタバが直面している現実はただひとつ。その現実があまりに大きすぎて、ドラゴンなんか目に入らない。
人をかきわけて階段を駆け上がり、エントランスに飛び出した。やはり群衆の喧騒が聞こえない中で、ふと耳に届いたのはとっくに聞き慣れた低い声。真紅の腕章を巻いて避難指示を飛ばしている男がいた。
「難波!」
姓を呼ぶと、難波ムツキと、そばにいたイチヒが同時に反応する。彼らが口を開く前に本題を切り出した。
「ミライ見なかった?」
ミライと面識がないイチヒのために「長い緑の髪で、線の細い女の子」と説明を加えるも、戸惑う表情は思い当たり節がないことをありありと語っている。
「加賀宮、いないのか?」
「看護婦さんの話じゃ、子供たちと外に出てるって」
「まじか……!」
絶句した難波ムツキがおもむろに外を眺めて、ため息を落とす。腰に提げた刀が軽い音を鳴らした。
「イチ兄、ちょっと出てくるから、ここ任せてもいいか?」
「おい、平気か?」
「無茶はしねえよ。引き際は弁えているつもりだ」
「……分かった。通信はいつでも繋がるようにしとけよ」
こくりと首肯する難波ムツキが出入り口と向き合う。そのままゆっくり去ろうとする背中を、とっさに掴んで引き止めた。
「待ちなさいよ!」
足が止まり、文句言いたげに振り返る顔。それと面して堂々と言い放つ。
「私も行く!」
「はぁ!?」
今度の絶句はイチヒもろともだった。
「何言ってんだよ、馬鹿かお前!」
「私が行かなきゃ! あの子を守るって約束したの!」
「こんな状況で約束なんて何の効力もねえよ。救助はムラクモや自衛隊の仕事だ、一般人はおとなしくしとけ」
「一般人!? あれだけトウシくんの特訓に付き合わせておいてその呼び方はないんじゃない!?」
「だからってお前を行かせるわけにはいかねえんだよ」
「自衛ぐらいできるし、あんたの手を借りることはないわ」
「そんな問題じゃねえ!」
「あ、あのさあフタバちゃん。今回ばかりはムツの言うこと聞いたほうが……」
「どんな問題も知るか! あんたがどう言おうと勝手に行くから!」
「こんな状況で議事堂から出ようなんて馬鹿げてるだろ!」
「おーい」
「助けに行くのに馬鹿も阿呆もあるか!」
「立場を弁えろっつってんだ! 救助は俺たちの仕事、お前はおとなしく待ってろ!」
「二人ともその辺に」
「イチヒさん!」
「おう!?」
「腕貸して、左腕!」
「お、おう……」
「おい馬鹿っ、イチ兄! 手ぇ引っ込めろ!」
難波ムツキの制止も虚しく、イチヒは素直に左腕を渡す。赤いスーツに包まれた左腕の上腕に巻かれた真紅の印、フタバはそれを躊躇なく引き剥がして自分の上腕に巻きつけた。
クリップで固定して幾度か腕を振り、腕章をしたままの彼に向き直る。輝いて見えていたムラクモの証は思ったより軽かった。
「これで文句ないでしょ! ほら行くわよ難波ムツキ!」
言うが否やスニーカーを鳴らして走り出す。後から難波ムツキがついてきていることを確認して、目線は前に固定した。
脅威と絶望に呑まれた東京はやはり静かだった。自分の鼓動だけがうるさくて、何も耳に入ってこない。視界も色素を感じないほど淡く、モノクロと呼んでも過言ではない世界から友の緑色だけを探す。色素が失われるほどの絶望的な光景は何度か見たことがある。あの時は、モノクロの中で色付いていたのは黄色だけだった。戦友の服の袖――アサヒの左腕の色。ドラゴンの口から垂れ下がる細い腕を思い出して戦慄した。ミライに同じ末路を辿らせてはいけない。死んだアサヒが守りたかった彼女を、フタバ自身が守りたい彼女を左腕だけにしてたまるか。自らを鼓舞して意志が固まり、視界がよりクリアに、モノクロになる。体が軽くなってスピードが上がる。全身に巡る血が昂る。神経が研ぎ澄まされる。守る意志がそうさせる。
どこかで轟いたドラゴンの咆哮、聞きつけた刹那、地面を蹴った。
近づくほどに聴覚が絶望の音を捉えていく。ドラゴンの鳴き声、子供の泣き声、あの悲鳴は親友のものだ。見つけた、息を呑んで足を速めた。
モノクロの視界に、緑色が鮮やかに映った。親友を中心にどんどん世界が色づいて、絶望が現実味を帯びていく。遊具もなく広場だけになった公園、金網を背に怯える三人の子供、子供たちを庇う親友、立ちはだかるドラゴン。一目でわかる簡潔な状況だ。
「お待たせ、ミライ!」
呼びかけながらドラゴンに駆け寄り、拳を叩き込む。厚い皮膚はやはり硬いが、怯まず二撃目。気に障ったらしいドラゴンが一吠えして長い首を振るうも、すかさず後退して回避する。
一年前はもはや過去だ。一匹の小さなドラゴンにすら張り合う自信がなく、戦線に出ることを恐れたあの頃とは違う。今は、トウシと共に磨き上げた力があり、それを堂々と振るえている。親友を守る力を得ている!
「私が時間を稼ぐから、その間に逃げて」
「でもフタバが!」
「大丈夫だから! 難波、誘導お願い!」
「役割逆だろ!」
「いいからやれ!」
誘導を任せたのは、ドラゴンを前に戦意を喪失し、両親を失った彼への気遣いも含まれている。難波ムツキもそれを察したのか、それ以上言わずに子供たちの誘導を始めた。
ドラゴンは子供たちを一瞥するだけで、ほとんどフタバを睨んでいる。地を蹴って距離を詰め、懐に潜り込み腹を殴りつける。吠えたドラゴンがどたどたと後退し牙を剥けば、こちらも後退して隙のできた下あごを突き上げた。
攻撃こそできているが、手ごたえの割に相手のダメージは少ない。だからこそフタバは回避を念頭に置いていた。元々眼力に優れている自分の得意分野はそれで、今回の目的も救助のための時間稼ぎだ。攻めに転じすぎて返り討ちにあってしまえば元も子もない。だから、人間と違う骨格を凝視し、動きを予測して、見切り、隙があれば攻撃する。相手の呼吸に合わせながら自分の間合いを保つことは息をするように簡単だ。このペースを維持できれば怖いものなどない。攻撃を避けて、一撃を与える。繰り返していれば、きっと。
翼や首を振るっていたドラゴンがぴたりと動きを止め大きく息を吸い始める。目に見えるほどの大きな隙はまたとないチャンスだ。「今のうち、急いで!」おぼつかない足取りで遠ざかっていく彼らに声を飛ばすと、子供の背を押すミライが振り返った。ぱちりと交差した眼差しから憂慮の感情が伝わってくる。大丈夫だと強く頷いた刹那、鼓膜をくすぐるドラゴンの鼻息。
「逃げろ杉下!」
難波ムツキの大声に、しかし動いたのは足ではなく顔だった。おもむろにドラゴンへ視線を戻せば、口から炎を零して牙を剥く姿が目に映る。大きすぎる隙は大技の準備だと相場が決まっているのに。胸中で舌を鳴らしてももはや手遅れだ。吐き出された灼熱の息吹、回避を試みても今までの攻撃と範囲が段違いで、逃げ切れなかった右足がじゅうと音を立てた。喉まででかかった悲鳴を噛みしめて、だが立ち上がれず地面に伏す。逃げようにも蝕む熱が心身を阻害し、涙が滲む。ドラゴンが音を立てて近寄ってくる。敵意が溢れる獣の目でフタバを見下ろし、牙から一筋の唾液が落ちた。視界から色が削げる。モノクロの絶望が眼前に広がる。友人を守れたことに悔いはないが、自身の実力が通用しなかった事実が悔しくて仕方ない。あの世に行ったらアサヒに愚痴ろう。でも、死ぬ前に一言謝りたかった。
(ごめんね、ミライ。もう、守ってあげられそうにないや。ごめんね、難波。ちょっといきがっちゃった)
このままかつての戦友と同じ末路を辿り、左腕だけ残して消えるのか。悔しいが、それが現実だ。最後の抵抗にドラゴンの舌を引っこ抜こう、このまま食べられるのはごめんだ。ああしかし、そんな力は残っているかな。
「フタバぁあああああ!!!!」
鈍りゆく聴覚をかろうじて刺激したそれは、親友の叫びだった。そういえば、現実的な難波ムツキと違い、彼女は夢見がちで諦めが悪い節がある。このままフタバの死を受け入れず、闇雲な行動を起こすんじゃないかと微かな不安がよぎった。
重いまぶたを懸命に開けば、こちらに走ってくるミライの姿。駄目、逃げて。声を張り上げようにも喉が焼けるように熱くて叶わない。ドラゴンの注意がミライに逸れる、恐怖で全身が冷えた。
「フタバから離れろぉおおおお!!!!」
聞いたことのない声量のそれは、叫びというより猛りだ。雄々しく吠えて目を見開いたミライが、ぐ、と左手を握り込む。
一瞬だった。
ぶわり、と紅蓮の焔がドラゴンを包み込んだ。
どこからともなく現れた空気すら焦がす強烈な焔は、ドラゴンの全身を覆い隠して高く天へ昇っていく。
頭のてっぺんから尾の先にまでくまなく焼け跡を刻み、確実にドラゴンを蝕んでいく脅威。
最後の力を振り絞るような咆哮は、強い熱を帯びていた。
炎が消えて巨体が崩れる。
一連の光景には覚えがある。かつて、フタバとミライを救った13班のひとり、凹の女が使った力だ。まぶたに焼きつき離れないほどのインパクトを持つ光景が、今まさに目の前で再現された。まるで鏡に映したかのように寸分の狂いもなく、一年前の記憶をそのまま映し出したような焔だった。
倒れたドラゴンのそばで、ミライは膝から崩れて体を震わせていた。だらりと垂れたふたつの腕、その左側からは恒星のような眩しい光がさんさんと放たれている。その光を見下ろして、ミライは笑った。震えながら、笑っていた。
「あは…………あははははは!!」
どこからともなく焔を生み出せることも、左腕が光ることも、楽しそうに高く笑う姿すらフタバは知らない。自分を守ってくれた彼女が本当に親友なのか、その判別すらできない。
「私の勝ちだな、ドラゴン」
強気な笑みを残し、きっぱりと言い放った彼女は、自分の知っている親友だろうか。
駆け寄ってきた難波ムツキを呼び捨てにして、やはり輝く左の手の平を差し伸べてくれた彼女は。
「お待たせ。……やっと守れるようになったよ」
――紛れもない、十年来の親友だった。
【変わり果てた未来】
七人の難波の中で超能力に精通しているのはひとりだけ。黒い皮膚を持った大男こと難波バンリは、ゴーグル越しにミライとフタバを見つめながらそっと語り出す。
「ミライさんのその能力は、超能力で例えるならば念写が近いだろう」
「念写?」
「心の中で思い浮かべたものを、写真や映像という形で具現化するものだよ。まあ、あくまで例えればの話だ。君の場合は、記憶に刻まれた光景を現実に反映させたとか。それがエネルギーを持っているとなれば、正直、念写の域を超えている」
「私は、この力でドラゴンと戦うことができるのか?」
「実際に倒した前例があるから、肯定せざるを得ないな。だが記憶準拠となれば使える力もその威力も非常に限定的なものになる。能力に実用性を求めるなら、他のサイキックの能力を見て勉強するしかないだろう。天候を参考にするのも悪くないかもしれない」
静かな調子で話を続けるミライとバンリに、フタバは居心地の悪さを感じつついる。
ミライが突如能力に覚醒して力を手に入れた今、自分の存在価値が問われる気がした。
「君の超感覚は本物だ。いつか貴重な戦力となるだろう」
「ありがとう。近いうちにその期待に応えてみせる」
難波が認める能力を得て、ミライは変わった。根本的な人格や記憶はそのままのようだが、口調が雄々しくなり、時折気性に変化が生じる。あの高笑いがいい例だ。フタバを守れるようになった、その現実に高揚しているのかもしれない。
ミライがドラゴンを倒してから、彼女の13班入りが決まった。一匹とはいえドラゴンを倒した実績と、覚醒した能力の制御訓練を兼ねての決定で、スカイタワーで倒れたトウシたちの代わりになる人材を本部が欲したのと、本人が強く希望したのもあって、とんとん拍子でことが進んだのだ。
腕章を剥がしてドラゴンと張り合ったフタバにその声は掛からない。不意に現れた有望な人材に夢中なのも理解できるが、疎外感はどうしても拭えない。俯いて目に入った右足に火傷の跡はない。ミライが目覚めたての力で治したのだ。治癒能力も、あの凹の女が使った記憶をなぞったものらしい。
親友がどんどん離れていく。寂しいと言った彼女の気持ちが、今なら分かる気がする。
「フタバ、大丈夫か?」
心配げに眉をひそめるミライに、笑みを繕い「平気」と返す。「ならいいけど」晴れない顔をするミライの左腕に目がいった。前腕には不安定な能力を抑える効果を秘めているらしい黄色の篭手、上腕にはムラクモの証である真紅の腕章。どちらも酷く眩しかった。
「ごめん、ちょっと出てくる。すぐ戻るから」
断りを入れてすぐ、返事も待たずに部屋を出た。ムラクモ居住区は広く作られていて一般居住区よりずっと居心地がいいが、自分がいていい場所とは思えない。ふらふらと歩いて適当な椅子に腰を下ろし、息を吐く。
ずっと守っていた親友に守られて、弱かった親友が自分よりずっと強くなる。十年来変わらなかった立場が一瞬で逆転した、その事実に打ちのめされる。情けない自分に腹が立ち、いっそ泣きそうな気分でもあった。
「何らしくもなくへこんでるんだよ」
椅子がぎしりと沈む感覚。聞き慣れた声は顔を見ずとも判別できる。「難波」名を呼べば返事が来た。「おうよ」
「私、最低よね。ミライが弱いって勝手に決め付けて、弱いあの子を守れる自分に酔ってたのよ。ほんと、反吐が出る」
「女子高生で反吐が出るなんて使うの、お前くらいじゃねえか?」
「あ、そ。私も今初めて使った」
「なら二度と使うなよ」
ふと会話が途切れる。流れる沈黙は重いが特別苦ではなく、再度口を開いた難波ムツキも気楽そうに言葉を紡いだ。
「気にすることないんじゃね?」
意図が読めずに首を傾げる。難波ムツキは言葉を続けた。
「自分に酔うってのは普通の話だし、加賀宮だって、二日前まで普通に弱かったし。つうか、守りたい気持ちは本物なんだろ? だったら気にすることねえよ。無理に潔白でいようとするな」
ぶっきらぼうな物言いが痛んだ胸に染み込んでくる。どこまでが激励でどこまでが本音かは判別に苦しむが、気楽な口調が今は有り難い。
「難波に励まされるとは世も末ね」
「現にドラゴン再襲来なうだからな」
「はは。それだけやばいなら、そりゃミライも強くなるか。……私も、あの子の力を受け入れないとね」
しみじみ発したその言葉に、難波ムツキは顔をしかめた。何事かと尋ねれば、しばし考え込んだ様子を見せた後に「加賀宮には悪いけど」と前置きを入れる。
「俺が見た限りだと、あいつは全然弱いままだぞ。ドラゴンを倒すほどの力を手に入れたにしても、いまいち頼りないというか、危なっかしい。何かの拍子で精神状態が乱れて使い物にならなくなるのなら、そいつは強いと言わねえよ」
いつか聞いた難波ムツキのトラウマを思い出す。精神面の強さを問う彼は、それの必要性を誰よりも実感しているのかもしれない。彼は何とか立ち直りかけているようだが、例えばミライが同じ目に遭えば。力がありながら意志が足りず、フタバや難波ムツキを目の前で失えば。想像するだけで鳥肌が立つ。
「それは、そうかもしれないけど」
「加賀宮、特にその傾向がありそうだからな」
「でも、何かの拍子があっても強い精神を保っていられるなんて、そんなの人間じゃなくない?」
「言いたいことは分かるが、それも戦士の素質だろ。考え方の切り替えとか、立ち直りの早さってのもあるし。その点に関しては、加賀宮よりお前のほうがずっと上だと思うね」
「私が?」
「意志の強弱でいうなら、加賀宮には不安要素が多い。だから、その辺はお前が支えてやれや」
「あんたじゃ駄目なの?」
「駄目。つうかお前じゃなきゃ無理。仲良いし、お前のS級の頑固さはあいつに必要だろ」
「頑固って、何それ、褒めてないでしょ」
「今までにないくらい敬意払ったつもりだけど」
「そりゃどうも。でも、気持ちだけ強くても意味ないじゃない。それじゃ何も変わらないし、ミライを守れない」
自分の気持ちが強くて、ミライの気持ちが弱いとしても、物を言うのは圧倒的な力。それが足りなければ意味がない。
「じゃあ気持ち以外も強くなればいいじゃん」
返ってきたのは、これまた気楽そうに吐き出された台詞。弾かれたように顔を上げて難波ムツキに目を遣ると、けろりとした表情を浮かべていた。訝しげな目付きで続きを問う。
「今まで以上に鍛えてさ、加賀宮の能力ぐらい強くなればいいじゃねえか。そしたら二人で対等になるだろ」
対等になる。それだけの言葉が、立ち眩みするほど衝撃だった。
そういえば、二人の関係が対等でなくなったのはいつからだ? 平和に学校へ通えていた日常では実力差こそあれど強弱はなかった。ドラゴンが襲来して、アサヒが死んでから、自分が守ると躍起になってミライを弱者に分類し、何もかも彼女を優先した。その頃から、対等は失われていた。
戦う力がなくて寂しい。親友は確かにそう言った。寂しい思いをさせていたのはドラゴンではなく、自分ではないか。対等でいようと、ようやく力を得て追いついてきた親友が自分を守ったのに、その事実を嘆くなんて。
「……ほんと、反吐が出る」
「お前がそんなに口悪い奴だなんて思わなかったよ」
口を押さえて前に屈む。難波ムツキの言うとおりだ。彼女の強さに圧倒されるなら、その分自分を磨けばいい。守られるだけの現状を嘆くなら、彼女のように力を得てこちらも守ってやればいい。そうして対等になり、横並びで立てるようになれば、きっとお互い寂しくない。
そんな簡単な事実に、言われるまで気付かなかった自分が、とにかく情けなかった。
「あーもー、泣きそ。すぐ戻るって言ったのになあ」
「タオルいるか?」
「いらないわよ、あんたの前で泣いてたまるか」
「まあそう言うなって」
伏せられた視界に、ふと割り込んでくる真紅の色。竜を模った証印がついたそれは、タオルと呼ぶには少々固い。
顔を上げれば、難波ムツキの上腕に同じものが巻きついている。
「いるんなら、やるよ。イチ兄からかっぱらったんじゃないぞ、お前のために用意したもんだ」
力がある者の証。誇り高き称号を、手を震わせ受け取った。重く眩しい戦士の証を、しかと握りしめる。
「加賀宮を守る気でいるなら、必要だろ?」
そのとおりだ。対等でいるために、強くなるために、この腕章はどうしても必要になる。たくさんのものを背負う証明を、たったひとりの親友のために巻くことができるか。
――そんなの当たり前だ。
彼女を守るためなら、脅威のひとつなんて恐れるに足りない。
(私だってミライを守れる)
強い意志に揺らぎはない。上腕に巻きつけた腕章は、驚くほどしっくりと袖になじんだ。
【双葉の芽】
加賀宮朝日(アサヒ)/外観:サイキック男(黄)/職業:デストロイヤー/CV:櫻井孝宏
ミライの双子の兄で、フタバの幼なじみ。優れた戦闘技術を持っていたが2020年のドラゴン戦役で死亡。
ROMには未登録。
大河内晃一(おおこうち)/外観:サイキック男(通常)/職業:デストロイヤー/CV:岡本信彦
通称こーちゃん。2020年のドラゴン戦役で活躍したひとり。目付き悪くて縦に長い。現在リハビリ中。凸。
ROMでは難波家と別データで稼動中。
遠坂恵理衣(とおさか)/外観:デストロイヤー女(通常)/職業:サイキック/CV:悠木碧
一見小学生なロリ高生。2020年のドラゴン戦役で活躍したひとり。現在リハビリ中。凹。
ROMでは難波家と別データで稼動中。
城島大輔(じょうじま)/外観:ハッカー男(通常)/職業:トリックスター/CV:阿部敦
大河内と20cm差、遠坂とも20cm差。2020年のドラゴン戦役で活躍したひとり。現在リハビリ中。平。
ROMでは難波家と別データで稼動中。
難波一飛(イチヒ)/外観:トリックスター男(赤)/職業:サムライ/CV:江川央生
生き残った難波家で最年長、ゆえに代表者。しかし少々人見知りで消極的など、いまいち頼りない。
ROMでは二軍、二軍の中でも最強。
難波五花(イツカ)/外観:サイキック女(茶)/職業:トリックスター/CV:伊藤かな恵
元気で明るく陽気で軟派。面倒なことはとりあえずイチヒくんがやってくれると信じてる。
ROMでは一軍、一軍の中でも最強。
難波十志(トウシ)/外観:サムライ男(茶)/職業:デストロイヤー/CV:梶裕貴
難波家最年少かつ最強のポテンシャルを秘めている。しかしマイナス思考。超がつく生真面目。
ROMではリーダー担当。大抵の竜はこいつとイツカが倒した。
難波万里(バンリ)/外観:デストロイヤー男(茶)/職業:サイキック/CV:竹内良太
難波家唯一のサイキック。静かで紳士的な天然フェミニスト。
ROMでは二軍、その中でも出番控えめ。
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