世界樹4の話。
6層にめげたので、ぼちぼち2周目を始めました。
ナイシ(ソド)、スナ(モフ)、ダン(スナ)の3人は固定で、空枠にはレベルが低いキャラやミスティックを入れている感じです。
2周目開始時点で40レベルを超えていた3人なのでさくさくプレイです。
リンク+スコールショットを楽しめるのはもう少し先の話みたい。
というわけで2周目を始めた勢いでダンサーの話をちょろっと書いたので載せにきました。
ティラピア:ダンサー女1Y。アークアビス海賊団の一員。勝気な女の子。陸路はるばるタルシスに
店主:グラはなし。二十年前は眼鏡バリ、前陣放って介錯に勤しんだ彼だが今は引退して軽食店の店主
もしかして:トビハゼ
養女:眼鏡メディ女1。名前はメアリ。店主が手塩にかけて育てた女の子。出てこない
船長:アークアビス海賊団船長で、ティラピアの恩人。いつも悲しい顔をしている。出てこない
もしかして:イサキ
本編開始直後なので特にネタバレはなしです。
深海の淵の星
からからと鳴るのは扉の鐘、あれが最後に揺れたのは何日前だったか。店主はぼんやりとした頭で過去に意識を走らせつつ、来客を窺った。
透き通った青空を背に入ってきたのは少女だった。あまりに細い体はスレンダーなんていいものではなく、肉がなくて貧相だ。それでも伸びた背筋と鋭く輝く金色の眼差しは立派なもので、胸中に秘められた誇りをこれでもかと見せつけてくる。二つに結われた長い髪と小麦色に焼けた肌はコントラストを生み出し、体のあちこちにつけた装飾品や隠すことのないボディライン、しっかりと携えた得物すらもが相まって、彼女はとても鮮やかだった。
粗暴でありながら凛とした気品は鋭利と似ている。だけど悲しきかな。
「まだまだガキだな。七年後にまた来な、そしたら一緒に寝てやる」
「なんであたしがおっさんと寝なきゃならないの」
憤怒が込められた冷静な返事にも店主は悪びれない。「だってお前、俺のお手製パンケーキを食べに来たわけじゃないんだろ?」少女は鼻であしらった。
「あんたに聞きたいことがあるの」
「聞きたいことって言われてもねえ。俺が扱っているのはおいしい軽食とかわいいお菓子、情報となると専門外だ」
「違う。そんなんじゃない」
「じゃあどんなことよ」
「アークアビスって知ってる?」
半ばあしらうような対応をしていた店主が、その瞬間に目付きを変える。鮮やかな少女を見て、据えて、定めて、大きく口元を歪ませた。
「海賊団だったな。といっても強奪も遺跡荒らしも行なわない、どころか港町に居つくことすらしないで、ふらふらと世界各地を巡るだけ。船長はたったひとりで国を滅ぼした、とか言われているらしいが、それも十年以上前の噂だし、それ以外の功績が何もない。本当に、名ばかりの海賊だ」
「詳しいじゃん。専門外って言ったくせに」
「昔の仲間がそれに所属してるからな。動向は気にかけてやってるのよ」
「それって誰?」
「そりゃあ、船長さんだよ」
くっくと喉で笑った店主が、適当なカウンター席を勧める。戸惑った少女が店主を見遣るとご機嫌な顔が目に入った。
「座りな、俺も聞きたいことができた。腰を据えてゆっくり話そうぜ」
それでも尚、少女は座らない。プリンと果実ジュースを用意され「俺のおごりだ」と言われてもためらうばかり。初めの挨拶が失敗したかと解釈した店主は、無理に座らせることをしないまま、カウンターに頬杖をつく。
「まずはお前のことを教えろよ。素性の分からない相手と話すのはちと心地悪い」
「……ティラピア」
応えてもやはり座らない。店主は「ティラピアか」と耳にした名前を口で転がしてから、続ける。
「お前はアークアビスの一員だな?」
「まだ言ってないはずだけど」
「聞かなくても分かる。わざわざ俺の所に尋ねてきてぶしつけにその名前を出してくるってことは、俺と船長の縁を知ってたんだろ? そんな細かくてどうでもいい情報、仲間内でしか出てこねえよ」
「……じゃあ、あたしがここに来た目的は?」
「ここっていうのは、俺の店か? それともタルシスか? まあ、海に生きるはずの海賊がはるばると陸路を渡ってまでこの街に来る理由があるとすれば、それは世界樹サマだろうな」
よそ見をして窓の外を眺めると、遥か遠くにそびえたつ大樹がある。あの大樹は、タルシスの領主と数多の住人、そして冒険者たちが何年も掛けて追いかけている夢そのものだ。まさか海賊が海を離れるほどの魔力を持っているとは想定外だったが。
「で、世界樹サマに挑むはいいが宛も資金もほとんどないから、とりあえず拠点だけは押さえようと船長の仲間だったっつーいかした親父を頼ってみたってところか」
「……当たり。何かむかつく」
「最高の褒め言葉だ。でもよ、何では分かっても、どうしては理解できないんだよ。俺が聞きたいことっていうのは、それがひとつ」
「他にもあるの?」
「そっちがメインだ。そちらの船長さんについてだよ」
船長、その言葉が店内に響き渡った瞬間、ティラピアの表情が硬くなる。鋭かった金色も陰り、弱々しく伏せられてしまう。
「あたしも同じ」
「あ?」
「キャプテンについて聞かせて」
顔を上げたティラピアの必死な様子に、店主は言葉を呑み込んだ。自分にはできない形相だ、と思った。
再度椅子を勧めると、今度は素直に腰を掛けた。カウンターに置かれたプリンを口に運びながら、ティラピアは細々と語り出す。
「あたし、キャプテンに助けてもらったんだ。ろくな名前すらなかった奴隷のあたしに名前をくれて、枷を解いてくれて、居場所もくれた。だからあたしはキャプテンが好きで、アークアビスが好きだったの。だけど、キャプテンはずっと悲しい顔をしてる。あたしを幸せにしてくれたのに、出会った時からずーっと悲しそう。あたしはキャプテンに元気になってほしいから、どうにかしようと頑張ったけど、どうしてもうまく行かなくて。それどころか時間が経つごとに悲しそうな表情が悪化しているし。ただでさえ冴えない活動もさらに萎える一方だし。最近はとうとうクルーたちが口々に潮時だ、とか言い出すし。潮時って何の潮時なの、とか思うじゃん? 海賊団が潮時ってこと? もしもアークアビスが終わったら、キャプテンはどこへ行っちゃうの? あたしはどこへ行けばいいの? そう考えたら不安になってて、そんな時にちょっと寄った港でここの世界樹のことを知って。そこで手柄を立てて名声を手に入れたら潮時じゃなくなるかもしれない、アークアビスがなくならないかもしれないって、そう思ってクルーに呼びかけたけど、みんないい反応しなくって、むしろ行くならひとりで行けって感じで。そしたらクルーのひとりが、タルシスにはキャプテンの昔の仲間がいるはずだって教えてくれて。こうなったらもう、あたしがやるしかないじゃん」
細々と、しかし長々と、愚痴のように心に溜まった思いを吐き出してから「これおいしい」とようやく味の感想を伝える。店主は失笑した後に礼を伝えた。
「で、キャプテンがどうしてあんなに悲しそうなのか、聞きたいんだけど」
「聞いてどうする?」
「悲しみのもとをどうにかして、気持ちを軽くさせて、あわよくば幸せになればって」
「そういうことなら、お前が手柄を立てて海賊団を立ち直らせたら喜ぶんじゃねえの?」
「だったらいいなとは思うけど、うまくいくか不安でさ」
「そんな気持ちで冒険者ができるかってんだ」
「違う。キャプテンが喜ぶかってこと。世界樹に行こうって言った時、真っ先に反対したのキャプテンだから」
「それを跳ね除けてまでひとりで来るとは大した肝だな。自分が帰った時に海賊団が潰れているかも、なんて考えなかったのか?」
「……あっ!」
途端に青くなっていく表情にまた失笑する。この向こう見ずで浅慮的な行動力は昔の彼を連想させた。冒険者を始めたばかりの娘にも。
「まあ、甘ちゃんなあいつのことだ、お前の心意気は買ってるだろ。何なら俺が手紙を飛ばしておくぜ、お前のクルーは俺が預かっているってさ」
「え、じゃあここに置いてくれるの?」
「ああ、ついでにギルドも紹介してやるよ。あいた時間に店を手伝ってくれるならな」
「やった! 助かった! ありがとう!」
打って変わった明るい笑顔には、先ほど青をさした不吉な可能性の影もない。店主はその顔に、さらに光を浴びせる。
「俺が面倒みている娘が入っているギルドでな、俺もちょこちょこアドバイスさせてもらってる。だから俺の紹介だって一言伝えれば一発加入よ」
「へえ! そのギルドの名前は?」
「イノセントブルー。探索後はセフリムの宿で休んでいるはずだから、そこを張り込めば会えるはずだ」
「よし! じゃあ早速行ってくる!」
「ちょいと待て」
立ち上がるティラピアに待ったを掛ける。ティラピアは目を丸くしながら素直に座り直した。
「お前、クラスはどうするつもりだ? パイレーツなんて堂々と書いて冒険者登録をするつもりか?」
「え、駄目?」
「駄目。タルシスで推奨されている冒険者の職業にパイレーツはない。海もないのにどうして海賊が、とか言われたいのか? 言われたいなら無理には止めないが」
「じゃあ何になればいいのよ?」
「海賊船でマスコットしていたわけじゃないんだろ? 武器は何が使える」
「剣、弓、銃、短剣、棒と一通り。伊達に仲間にしごかれてないからね。あ、あとキックには自信ある!」
「キックを魔物にしていいのは気功師ぐらいだ。じゃあ、ここに都合よく模造刀があるから、ちょっとこれ振ってみろ」
調理場に備えていた模造刀をティラピアに手渡す。受け取ったティラピアは店内の中央にあるスペースへ移動して息を吐き、模造刀を払った。次々に止め処なく、一点に見据えた獲物をただのひたすら薙ぐように。鮮やかな姿がくるくると回り攻めるその様は、まるで舞いだ。鳴り響く足音と空を切る音色は軽快なリズムを奏でている。
「ダンサーだな。ちょうどギルドに不足していた」店主の呟きを拾ったティラピアがようやく足を止め、得意げに威張る。
「得意分野!」
養女へ宛てた紹介状をさらりと書いて、ティラピアに渡す。中身を目にした彼女曰く「読めない」とのことだが、みみず書きこそが店主がつづったことの証明になる上に、その字で育てられた養女なら解読が可能だ。その旨を伝えるとティラピアはあっさりと納得し、元気よく店を出て行った。
「また今度来るから!」
離れていくティラピアを見届けて、姿が消えた頃に視線を落とす。そこにあるのは、空になったコップと皿。彼女に出した品ふたつ。
あんまりな挨拶を受けて警戒していたはずなのに、結局はきれいに平らげたのだ。その気持ちが嬉しい反面、ひとつの確信が心に影を落とす。
(……あいつ、馬鹿だな)
もちろん、親しい相手に贈る愛嬌を含めた蔑称ではなく、頭の悪さを痛感した上での一言だ。店主は心の底からティラピアの知能を憂いだのだ。
彼女が口にした境遇を思えば仕方ないのかもしれないが、しかし目の前の情報に振り回されすぎている。少し興味の矛先を変えて話題を誘導してやれば、こんなに扱いやすい奴もいない。
彼女は、大好きなキャプテンが悲しみに暮れる理由を聞き逃している。
もっとも、聞かれないように店主が誘導した結果がそれなのだが。
(言えるかっつーの)
十年以上――もしかしたら二十年は抱えている悲しみを、他人が吐露できるはずがない。自分が口にしたところで、そこには彼が抱えてきた悲しみが微塵も含められない。だとしたらその言葉に何の意味があるのか。
店主は待っている。男が自らの口から悲しみを吐き出す日を。吐くだけ吐いて空っぽになった彼に、空白を埋める喜びを与える日を。
そこで初めて借りを返せるのだから。
(案外その日は近いのかもしれねえな)
彼を慕う海賊の娘と、彼らが遺した愛しの娘。
二人が邂逅する瞬間が、何故だかとても待ち遠しい。
船長は、ナイシ男2で登録しています。2周目の切り込み隊長です。突剣のリンクが属性チェイスっぽいです。
2周目を共にしているスナは、女1を登録しています。男で、船長の左腕設定です。開幕羅刹がよく似合います。
眼鏡バリを???の男1Yにするかは、まだ悩み中。どや顔成分が足りなくて(私的意見)
世界樹3からの続投はこの3人で全てです。
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