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臆病なヴァンガード

お久しぶりです。六層の恐ろしさに怯え逃げ惑っていたら、だいぶ期間があきました。
六層も三竜も手付かずのまま長らく放っておいたのですが(最近ようやく赤竜を倒しました。一番の武器はレベルでした)、その間も心の底にはソドメディ萌えがあったような気がします。
茶ソドと眼鏡メディです。地味同士かわいいです。世界樹4で最愛のふたりです。
というわけで、ちょっとした妄想を形にしたくなったので、さらさらと書いた文を投下しにきました。

小ソド男1 エリック 口数の少ない茶ソド。サブクラスはまだない。得意なスキルはヴァンガード。

小メディ女1 メアリ 自信家な眼鏡メディ。サブクラス検討。気になるスキルはヴァンガード。

サブクラス解禁後のお話です。第三迷宮中盤までのネタバレ注意。


「ヴァンガードってさ、どんな感じなの?」
 陳列された盾を眺めている時に、ふと飛んできた質問。エリックは反射的にメアリを見やる。すっかり聞きなれたその声は確かに彼女のものだったが、当の本人はけろりとした様子で同じように盾を眺めていた。
 質問の意図がわからないのと、答え方がわからないのと。突然のことで混乱して目をぱちくりと瞬かせたままのエリックを見かねて、メアリは言葉を続ける。
「この前、キバガミさんからもらったあれで、戦術の幅が広がったじゃん? 他の職業の技術もある程度は取り入れられるっていう」
「……うん」
 つい先日、キバガミから受け取りギルド長へ渡した書物を思い出す。便宜的にサブクラスと称された秘伝は、まだエリックの中でなじみ切れていない。剣一本で冒険者をやっていくしかないと考えていただけに、突如現れた可能性に困惑する一方だった。
 だが要領のいいメアリは既に秘伝を取り組もうとしているらしい。昔から優等生だった幼なじみは今でも優等生だ。
「それでね、どの職業を取り入れようかなーって考えて。ほら、わたしだったら何でもなれちゃうけど、どうせなら医術の底上げができるやつがいいかなって思って、そこでヴァンガードに目を付けたの。だから、参考にまで聞いてみようって」
「参考」
 ヴァンガード。捨て身の姿勢で先陣を切り、続く味方の道筋を自らの剣で示す構えで、エリックが得意とする技巧だ。
 強敵と対峙する際に幾度も使用して、窮地を脱したことも多い。しかし仲間からは「危なっかしい」だの「死にたがるな」だの大不評で、メアリも苦言を呈したうちのひとりだったはずだが。第一、先陣を切って攻撃する技巧と医術の底上げがイコールで繋がらない。
 はて、と首を傾げてみる。メアリは息をひとつ吐いて、ようやく盾から彼へ目を移した。
「あれだけ速く動けるなら、治療も素早くできそうじゃない?」
 釈然はしないが合点はいった。彼女らしい考え方だ。
「……応用すればできそうだけど」
「いざとなったら、エリックより先に敵陣に切り込めるかもだし!」
「それは止めて」
「で、実際どうなの?」
「どうって」
「どうやったら、あんなに迷いもなくばっさー! って切り込めるの? 恐怖心を捨てろとか、そういう系?」
「……ちょっと待ってて」
「よし待つ!」
 許諾を得たのでじっくりと考え込む。
 切り込み方を尋ねられても、エリックには見当がつかない。見当がつかないほど、本能的に行っているからだ。
 7歳の時、大きな犬に襲われたメアリを体を張って助けたのも、1年以上前にごろつきに絡まれている他人を身を挺して庇ったのも、すべて考える前に体が動いた結果だ。勇敢なソードマンのように、我が身を省みず人の役に立てる男になれ。物心つく前からそのような教育を受けてきた彼にとって、捨て身の行動は自分にできる精一杯をやっているだけ。至極当たり前のことで、ヴァンガードもその延長線でしかなかった。
 敵が目の前にいるから切り込んでいく。ただそれだけ。共に歩む仲間を守るため。幼なじみを守るため。
「……怖いとしたら、誰かが傷つくことかな」
「ん?」
 ようやく出たひとつの結論。突拍子もなかったそれには疑問符が返ってきた。
「死ぬことは怖くないけど、メアリや他のみんなに何かあるのは怖い。だから、怖くなる前にその可能性を断ち切らなきゃって、そう思っている……んだと思う」
「最悪の未来が怖いってこと?」
「たぶん」
 最悪の未来を見据えた時、その手は剣を握っている。ならばそれでできることをするだけだ。何よりも速い剣と化して、恐るべき未来を一刻も早く切り捨てるのみだ。
 鋭く軽い剣は折れやすいというが、それでも構わない。守られなかったまま生きるより、守ったうえで死ぬ方が良い。
「俺は、メアリがいなくなるのは嫌だから」
 彼女を守れるならそれでいい。
 言いたいことを言い終えて、盾の選別を再開する。隣のメアリも黙ったまま、同じく盾を眺めていた。
 耐久性に長けたカエトラか、攻撃を流すことに長けたフェザーシールドか。頭をひねり考えていると、横から手が伸びフェザーシールドが視界から逃げていく。
「わたしこれー!」
 言うが否や商品を抱えてはしゃぐメアリに、驚きを隠せない。出すべき言葉を選別しているうちに、「エリックはこっち」とカエトラを指されてしまう。先手を取られても尚、選んだ言葉は吐き出すが。
「盾は、メディックの装備に推奨されていないはずだけど」
「いーの! サブクラスにソードマンを申請しておくから。あとで改めて買いに来るぐらいなら、今買っちゃった方がいいでしょ」
「……やっぱりソードマン?」
「いやなの?」
「あまり前線に出てほしくない」
「大丈夫だよ。自分の身は自分で守るから。というか、そのための盾だし。そもそも治療で手一杯で前線とか出れないし」
 ずらずらと連ねた言葉を中途半端に止めると、カエトラも抱えてエリックを見据え「会計行こ?」と催促する。
 こう言い出したらメアリは止まらない。諦めざるを得なくなったエリックはため息を吐き、黙ったままふたつの盾を受け取って会計へと先導する。手が空いた彼女はエリックの隣で財布の中身を確認し始めて、その途中で口を開いた。
「あのねえ、エリック」
「なに?」
「エリックの話は参考にならなかったけど、でも、それ聞いてヴァンガード習得するって決めたんだから!」
「どういうこと?」
「わたしだって、エリックがいなくなるのは嫌なんだからね!」
 いーだっ、と歯を見せて控えめに睨んでくる。苛立ちこそなさそうだが、どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。
 いったい何が気に障ってしまったのか、まるで心当たりがない。かけるべき言葉も見つからず、このままでは宿への帰路が思いやられてしまう。2人分の盾が妙に重く感じた。




・ヴァンガードは発動に1ターンを要します
・持続は5ターンまでです
・先制ヴァンガードはありません
・上記を踏まえて、回復に素早さを求めるなら、使用武器を短剣に変えた方が賢明です
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2012年11月14日 | Comments(0) | Trackback(0) | 文章(Ⅳ)
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